【AIとは何か、どうやってつくるのか・3】アルゴリズムの選び方

「AIモデルをつくる」といってもイメージがわかないこともあるだろう。そこで、AIモデルの開発と一般的なシステム開発の違いについて整理をしよう。

従来型のシステム開発は、入力データを処理するブログラムを書いて、期待する出力結果が得られる仕組みになっている。例えば、「A」を入力して、「B」を追加するプログラムであれば、「A+B」という結果が返されるという具合だ。エンジニアはこのプログラムを書くことに専念している。

一方、AIでは入力と出力のペアを大量に集めることから始める。具体的には「こういう入力をした時はこういう結果だった」という入力と出力のペアを大量にAIに与えることで、「処理が自動で出てくる」のである。処理とは「識別」「予測」「実行」のタスクで、これを組み合わせて業務の自動化を行っていく。

【画像01】これまでのシステム開発とAI開発の違い

それぞれを簡単に説明すると、「識別」は「良品と不良品を分ける」や「類似する書類を検索する」などである。「予測」は「今のパターンだと、今後の価格はこのように推移する」や「今後こんなニーズが増える」、そして「Aさんとマッチする人はBさんだろう」などである。そして「実行」は「図面の作成」や「行動の最適化」、具体的にいうと「営業マンはこの順序で顧客を訪問するのが良い」などである。

この「識別」「予測」「実行」の各タスクは、アルゴリズムを使って実現することができる。機械学習ではさまざまなアルゴリズムが提供されており、目的に応じて使い分けられている。「回帰」「分類」「クラスタリング」「次元削減」などである。また、有名なディープラーニングも機械学習の中のアルゴリズムの一つである。

【画像02】利用するアルゴリズムの検討

では、アルゴリズムを使う上での留意点を述べる。事例は画像を使って識別を行うケースだ。製造業で製品の品質チェックに利用したり、建設業で設備の維持管理に使われたりしている。AIにおける画像処理というとディープラーニングが適していると考える人が多い。

しかし、シンプルな識別が可能な場合は、ディープラーニングのような複雑なモデルは使わないほうが良い。なぜなら、シンプルなモデルの方が検証しやすいからだ。AIは業務改善にも利用されることが多い。株価のように「単に価格が当たれば良い」というような目的以外は、モデルの検証はとても重要なものである。また、データを大量に使わなくてもモデル化できるので、試作コストも低くなる。簡単なアルゴリズムで対応できる場合は、まずそちらで試してみるべきなのだ。

また、いきなり複雑なモデルを構築して結果が出ない場合は、検証しきれないこともある。最初はシンプルなアルゴリズムで試してみて、結果を見ながら複雑なモデルを試すことをお勧めしたい。AIモデルの構築はアルゴリズムありきではなく、まずはデータの基礎処理に時間をかけ、モデルの検証を十分に行うことが大切だと考えている。

執筆者プロフィール

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戸嶋 龍哉(トジマ タツヤ)

The ROOM4D 代表取締役

長岡技術科学大学で情報工学系、特に自然言語処理やデータ分析に関わる分野を専門として学ぶ。ドリコムでソーシャルゲーム分析に従事。その後、DATUM STUDIOに創業期から参画し、幅広い分野のAIモデル構築やシステム開発を経験。2019年8月、The ROOM4Dを共同で設立。


こちらの記事は「週刊BCN+」に掲載(2022/10/21 )しております。

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